これを読めば美術の世界が身近になる「ブルーピリオド」

美術に関するマンガになると「アルテ」みたいに、ヨーロッパのガチ芸術に関するものだったり、あるいは美術品として見る「ギャラリーフェイク」みたいなのがありますが、まっすぐに美大を目指すリアルなマンガは初めてかもしれません。

「ブルーピリオド」
山口つばさ (著) 出版:講談社

主人公が好きなものに目覚めて、困惑しつつ壁にぶつかりながら目標に向かっていく話です。非常に自分好みの奴です。しかし1巻辺りで出た「芸大のトップは倍率50倍、東大より大変」ってのは驚きましたね、なんとなく大変そうだな~くらいに思ってたら、それほどとは…現役で入れる人なんてほぼいないみたいです、3~4浪なんて当たり前ぐらいの世界、いや本当にやばいですね。

登場してくる絵も、しっかり元を書いた作者の名前が入っていたりするところには「とめはねっ!」を思い出しますね。

脅されて書道部に入部した大江縁と、だまされて書道部に入部した望月結希。一風変わった先輩たちに翻弄されて、これでいいのかと思う日々。それでも、ダイナミックでデリケートな書の世界は、かなり魅力的で… 文化系青春コメディー、It’s 書(SHOW) TIME!! ※amazonから引用

同じ芸術分野で、しかも音楽ではコマで音を表現すると抽象的なものになりますが、絵や文字は実物を見せることが出来ますからね、取材が大変そう。

話を戻します。ブルーピリオドの一番いいところは、芸術という難解に見えるものが素直な主人公の視点で見ることで、非常に分かりやすく伝わってくるところです。よくありがちなのは、小難しく描写しすぎて余り読み手に伝わってこないということ。扱っているテーマがテーマなので、それはあっても仕方ないかもと思うんですが、この作品は違います。

なんでこの絵はカッコよく見えるのか、なぜ雰囲気が違うのか、それをきちんと理屈を立てて説明してくれます。その上で自分を掘り下げること、挑戦し続けることの大切さも教えてくれます。

例えば、自分にとって大切なものを書くことになり、それは縁だと思った。色んな人との出会いと繋がりがあって自分がいる。「縁」って言えば糸かな…と考え、糸を張り巡らせた絵にしますが、講師に「本当に君にとって縁は糸に見えたのか」と聞かれたことを切っ掛けに、どうも違和感がぬぐえないことに悩んだ末、「自分にとって、縁とは状況によって形を変える金属なのかもしれない」と結論を出します。そしてそれをテーマに書いた絵が色んな人に評価されます。

この展開は最高にクールすぎてしびれました。美術のことが全く分からない自分でも、この過程を経て書かれた絵はイイ絵なんだろうなと思えます。

主人公が渋谷の早朝を「青い」と感じました。なんでそう感じたのかも分からないし、それを周りに言っても理解されないことから、言葉で発信することはありませんでした。ですがふとした切っ掛けから、絵に落とし込むことで自分の感じたものを、自分から見えている世界を表現することが出来ました。しかも、多少なりとも周りにその世界が伝わったんですね。渋谷の早朝ってこんな感じかもと。

それが切っ掛けで絵にのめりこむのですが、先ほどの展開と合わせて読むと、なんだかよくわからない存在だった「芸術」が非常に身近なものになったと感じます。

ありがとう、ブルーピリオド。あなたのおかげで少し美術館に興味が持てました。

このマンガ、超おすすめです。

ただ、龍二くん…いる?なんでこの話にいるんだろってずっと思ってます。こいつだけ美術芸術全く関係ないところにいるので、なんというか恋愛系少女マンガに合体型の巨大ロボットが出てきてるような異物感があります。元の世界に戻してあげて、お願い。

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